2005-02-28

近況

たまには技術な週末にしようと思い, P2P 勉強会 というのに行ってきた. 電通大にて. 遅刻したので DHT の話は聞かず. 色々面白い話があったが, やはり仕事で P2P をしている人の話は説得力がある. フラクタリスト の山田さん, Ariel Network の徳力さん, あとは 産総研の首藤 さん. など.

フラクタリストの話. NAT 越えの技術に注力しているそうだ. NAT 越え, 最近読んだ "Peer-to-Peer Communication Across Network Address Translators" の調査では, UDP Hole Punching の使えるルータは 80% くらいとあったが, フラクタリストのミドルウェアは国内のルータだとほとんど使えるという. どうやっているかは知らないけれど, 実際に山ほど NAT を買って実験しているというから細かく泥臭い workaround の積み重ねなんだろう. そういうのはアイデア一発よりよっぽど差別化になる. NAT 越えが P2P の普及にとってボトルネックになるというこの会社の認識は正しいと思うが, それはつまり趣味プログラマが気楽に使えるインフラが揃うのには期待できないということでもある. 寂しい. しかし問題が解決できるという事実は頼もくもある. そのほか, NAT Trav のランデブーに使うサーバの負荷をさげる lightweight polling という技術の紹介もちらっと. これも技術的詳細は聞けず残念. まあ飯の種だから当然か. (ところで 上の論文には TCPHole Punching というのがでてくる. どんどん裏口路線に走っていくな. この世界は.)

Ariel Network の話. 技術の詳細はなかったが, P2P でどう商売していくのかという話を実際にそれをしている人から聞けたのは貴重. Napster のような consumer 向けは魅力は強いがリスクが高く, 当面は企業向けのサービスが妥当とのこと. そのほか, 実際に作っている groupware の紹介など. 実際に作って売ってフィードバックを得て...というところまで生き残った製品だけあって, 色々考えられていた. 既存のアプリケーションを置換するのではなく共存していくというグループウェアのアプローチなど. サーバが無い利点にしても, サーバ台をケチるというよりメンテナがいなくて済むからだという. 言われてみれば普通のことだが, そういう戦略の蓄積が企業なのだなと思う. P2P でビジネスをするにはアナーキズムをかなり意図的にとりのぞかねばならなくて, その意志制御が大変そうではあった. P2P コミュニティに染まるとどうしてもそういう反権力っぽくなりそうだし. ところで Ariel 社の社員 blog はなんだか楽しげだ. これだけ仕事でやっていることをオープンにできるのはいいな. 書き手の技量か, 会社の度量か.

首藤さんの話. Grid の語源が Power Grid だというのは実は知らず. はずかしや. P2P のような分散コンピューティングは, Web のようなシンクライアント指向(ダム端末としてのウェブブラウザ)に対する反動だ, という話は面白い. Web は PC の複雑さに対する反動なわけで, クライアントの複雑さはこうして波うつのだな. P2P がインフラとして定着したあとのシンクライアントの姿を想像するのには意味があるかもしれない.

そんな一日. 特に知り合いもおらず, 持ちネタがないので話題もなく, すごすごと退散する. mixi が中心のコミュニティらしい. 私は mixi に馴染めないので, 参加させていただく, というところに留まってしまうなあ. なんにしろ勉強になりました.